畿内説、九州説、百花乱立の邪馬壹國の比定地 過去の考古学、民俗学の定説に囚われ過ぎているのか プロの歴史学者も、アマチュアの歴史愛好家も 迷宮を彷徨う 魏志倭人伝の呪縛の29文字 南至投馬國 水行二十曰 南至邪馬壹國 女王之所都 水行十日 陸行一月 もし、二十日 十日 一月の記述が無かったならどうだろう 2015年、今、邪馬壹國の比定をGoogle Mapsから試みた


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37.文身國(2)-水銀ー

梁書東夷諸戎に記載されている文身國を比定するには、文身國に記述されている水銀に関して、掘り下げて考察する必要があります。原文は以下を参照としました。

中國哲學書電子化計劃
http://ctext.org/library.pl?if=gb&res=5879


繞屋爲壍 廣一丈 實以水銀 雨則流于水銀之上

家の周りに巾1丈の溝をめぐらせ、水銀で満たした。雨が降る度に水は水銀の上を流れた。

溝に入れた水銀の体積、重量を考察してみます。
家の大きさを10m四方、100m2(平方米)と仮定してみます。それほど広くは在りませんが、狭くない広さです。
丈は長さの単位で、1丈=10尺です。1尺の長さは時代によって異なるようで23-33cmと言われています。ここでは1尺=20cmとして、1丈=2mと仮定してみます。
溝の面積を計算してみます。

100m2

家の面積は、10mx10m=100m2(A)
溝を含めた四角形の面積は、14mx14m=196m2(B)
溝の面積は、(B)-(A)=96m2となります。
この溝に厚さ1cm水銀を敷き詰めたと仮定します。
溝の水銀の体積は、96m2x0.01m=0.96m3(立方米)となります。0.96m3に換算すると960ℓです。これは200ℓのドラム缶約5本分に相当します。
水銀の比重は13.5です。
重量は、0.96m3x13.5=12.96tとなります。
小型自動車(プリウスの車両重量は1.3-1.4t10台分の重量です。
桁違いの量です。文献によると奈良大仏建立時に使用した水銀の量は、約2.3tと記されています。金のメッキに使用すれば、奈良の大仏を6体作れる量なのです。

ドラム5本
プリウス10台
奈良大仏6体

仮定を変えてみます。
家の大きさを半分の5m四方、敷き詰める水銀の厚さも半分の5mmとして計算してみます。

45m2

体積は、(9mx9mー5mx5m)x0.005m=0.28m3(立方米)
重量は、0.28m3x13.5=3.78t
この量でも奈良大仏1体くらいは余裕で、全体に金メッキを付けることが出来る量なのです。

ドラム2本
プリウス3台
奈良大仏1体

文身國の王が権威を誇示するにしては、その量をはるかに超えているように思えます。この水銀は何の目的で溝に敷き詰めたのでしょうか。またどこから持ち運ばれたのでしょうか。

水銀の鉱石は以下です。

1) 辰砂
2) 自然水銀

1)  辰砂硫化水銀からなる鉱石です。硫化水銀は赤色の塊か、深紅色の透明感のある結晶です。

辰砂辰砂結晶

辰砂は産出量がそれほど多くなく、赤色顔料神仙薬(不老不死の薬)の成分として極めて貴重だったようです。同じ赤色顔料のベンガラは産出量が多いのですが、辰砂のほうが鮮やかな赤となります。辰砂自体、金、銀に匹敵するくらい価値があったのでは思われます。
文身國の家の溝に敷き詰めたのは辰砂ではないと推測します。辰砂は粉末、粒状の固体です。これを溝に敷き詰めても、雨水は辰砂の層に浸み込んで、その上を流れることはないのです。敷き詰めたのは金属の水銀だと考えます。

水銀は、辰砂を高温で熱することにより精製されます。

辰砂(硫化水銀 SHg)+ 空気(酸素 O2)
       → 水銀(Hg)+ 亜硫酸ガス(SO2)

硫化水銀は燃やすと、水銀二酸化硫黄(亜硫酸ガス)に分解します。水銀の沸点は約360℃で、それ以上に熱すると気化します。この蒸気を集めて冷却すると、二酸化硫黄は沸点がー10℃なので空気中に拡散してしまい、液状の水銀だけを取り出すことが出来ます。

2) 自然水銀は、液状の水銀が水のように溢れていたり、鉱石に閉じ込められています。採取すれば精製しなくても水銀を得ることが出来ます。

自然水銀

水銀の用途は何だったのでしょうか。

1) 鉱石から金、銀、銅などの精製(アマルガム法)
2) 銅鏡の研磨
3) 神仙薬の成分
4) 金メッキ(アマルガム法)


1) 古代より鉱石から金、銀、銅などを精製するのに、水銀が用いられていました。アマルガム法とよばれるものです。このアマルガム法で用いた水銀は、大部分は回収して再利用することが出来ます。金を1kg精製するのに水銀4-5kg使用したとしても、水銀の大部分は回収して再使用できるのです。また、金、銀を精製するには鉛を用いた灰吹法があります。産出量が多い鉛のほうが安価であり一般的だったのでとは憶測します。この用途での水銀の需要は多くなかったと思われます。

2) 銅鏡を磨いて表面を鏡状にするのに水銀が使用されました。これは水銀の代替品はなく、主用途の一つだったのではと思われます。ただ銅鏡100枚を作成するのに、水銀20-30kgで十分な量であったと思われます。

3) 水銀自体も辰砂と同様、神仙薬の成分としても利用されたと思われます。

4) アマルガム法を利用して銅の造形物に金をメッキする際にも、水銀が用いられました。特に仏教の伝来により、仏像が作られるようになると、銅製の仏像の表面をアマルガム法で金メッキして装飾を施すのに多くの水銀が使われ、需要が増えたと思われます。

金メッキの工程は以下です。

金を平たく延ばし、細かく刻む。
これを6倍量の水銀に加えて炭火で熱すると、金が水銀に溶けて水銀アマルガムが出来る。
これを皮に包んで絞ると水銀がろ過され、皮に金/水銀=1/2アマルガムが残る。
被メッキ物の銅製品の表面に、このアマルガムを塗布する。
塗布物を鉄板の上に置き、加熱すると水銀が蒸発して金メッキされる。
蒸気は一箇所に集めて煙突から飛散させる。
煙突の先を曲げてその下に受けを置くと、受けに水銀が溜まり回収することが出来る。

十分な回収装置があれば、金メッキに使用する水銀のほとんどは、回収して再利用できるのです。

最初の奈良大仏は、銅像の上に金メッキが装飾されました。文献では大仏建立に、金10、400両水銀58、600両が使用されたと記されています。1両40gで計算すると
金  10、400x0.04kg=416kg
水銀 58,600x0.04kg=2344kg=2.3t
となります。
金と水銀の比率は、金/水銀=1/5です。この比率は、金を水銀に溶かしたアマルガムをろ過せず銅製品に塗布し、さらに加熱して蒸発させた水銀も煙突で受けて回収せず、そのまま大気に飛散させていたことを意味します。製作場所の大気、土壌、水質の環境汚染は深刻だったと思われます。後年、水銀アマルガム法による金メッキは廃れ、金箔を表面に装飾する方法に変わっていきます。

さて、文身國の溝に敷き詰められた約13t水銀の考察に戻ります。

この水銀は、外部から運ばれてきたのではないと憶測します。水銀は、銅、錫、鉄などよりも産出量が少なく、金、銀ほどではないにしても高価であったと思われます。1度に13tを調達するのは困難です。少しずつ調達したなら、運搬容器の土器に入れたまま保管するのが自然です。わざわざ長年掛けて、少しずつ溝に敷き詰めたりはしないと思うからです。

この水銀は、文身國で産出されたものと憶測します。また水銀辰砂から精製されたものではなく、自然水銀から採取したものであると憶測します。

辰砂はそれ自体で、赤色顔料神仙薬としての需要があったのです。また、金銀の精製、金メッキに使う場合、その加工地域には辰砂から水銀を精製する高温加熱設備が備わっています。辰砂のままのほうが運搬も容易で、水銀よりは安価であったと思われるので、加工地域は水銀よりも辰砂を求めたと思います。水銀の需要量はそれほど多くなかったのです。辰砂から水銀13tも精製して、何年分もの在庫を抱えたりはしなかったと思います。需要分だけ精製するば良いはずです。

文身國からは自然水銀が産出されたと憶測します。

鉱山の自然水銀を放置はしないはずです。水のように湧き出していたのであれば、採取は容易です。山から集められた水銀は王の元に届きます。しかし水銀の需要は多くないのです。集められた水銀は、家の周りに掘った溝に貯めて、保管したのだと憶測します。水銀を敷き詰めた溝は、水銀の製品倉庫であったと考えます。

つまり、文身國自然水銀の産地であったと憶測するに至りました。



(つづく)
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